唾液検査で前立腺がんを発見

神奈川歯科大学大学院 口腔病理学講座・唾液腺健康医学研究室

 

「唾液検査で前立腺癌を発見」
〜第10回バイオテクノロジー国際会議バイオアカデミックフォーラムで発表〜

 神奈川歯科大学大学院口腔病理学講座・唾液腺健康医学研究室(所在地:神奈川県横須賀市)の槻木 恵一のグループは、唾液を分析して前立腺癌を発見できることをBiomarkers(in press)に発表しました。これは、いわき市立総合磐木共立病院泌尿器科との共同研究で、被災地福島県いわき市の皆様のご協力により行われたものです。なお、この成果は、630日開催の、第10回バイオテクノロジー国際会議バイオアカデミックフォーラムにて発表されました。


 近年、唾液を用いた検査に注目が集まっています。これは唾液であれば簡便に集めることができ、「痛くない・怖くない・長くない」医療を実現し、癌を早く見つけられるかもしれないからです。これまで本研究室では、唾液検査の実用化に向けて研究に取り組んできました。

 これまでも唾液で癌を発見する研究はありました。しかし、新しいマーカーを見つけることに重点がおかれているため、その実用化には、相当時間がかかりそうです。そこで、当研究室では、唾液は血液から作られ、血液成分を反映する点に注目しました。この現象により、既に広く使われている血液で検査してきた腫瘍マーカーも唾液を用いて検査すればよいことになります。しかし、その腫瘍マーカーが唾液腺自体ではほとんど作られていないことや唾液中に漏れ出てくる性状などの条件が必要です。

 上記の条件を満たす腫瘍マーカーとしてPSA()が有力であったことから、今回 前立腺癌を対象としました。前立腺癌は男性の癌であり米国では罹患数は1位で、日本においても確実に増加しています。解析の方法は、前立腺癌術後の患者(31)にご協力いただきました。これらの患者の血液と唾液中のPSAの相関を調べたところ、PSAは血中濃度が上がると唾液PSA濃度も上がる傾向があることがわかりました。特に、癌の再発を示唆する2.5ng/mL以上の患者(11)では強い相関を示しました。

 この研究の最も大切な成果は、既に広く使われている腫瘍マーカーが、唾液検査に応用できることが分かったことです。これにより、直ぐに役立つ唾液検査を世に贈ることができるかもしれません。また、癌以外でも、唾液検査の条件を満たせば、充分応用可能であるため波及効果も期待されます。この唾液検査の条件を示したところも新しい内容です。今後実用化に向けた検討を行っていきます。


日本経済新聞(7月3日朝刊) 掲載記事
(他多数の新聞に掲載されました)
唾液でも前立腺がん把握 神奈川歯科大学が研究

 前立腺がんの腫瘍マーカーで血液検査に使われるPSA(前立腺特異抗原)は患者の唾液にも含まれ、がん手術後の再発や転移を調べるのにも有効だとの研究結果を、神奈川歯科大の槻木恵一教授(唾液腺健康医学)らのグループが2日までにまとめた。

 PSAはがん以外の前立腺の病気でも数値が上がる。唾液は血液に比べ採取が簡単なのが利点で、槻木教授は「大規模な研究を進め、がん手術後の検査だけでなく、がんを含めた前立腺疾患の検診にも使えるようにしたい」と話している。

 PSAは普通に前立腺から分泌される物質だが、がんなどの患者では血中の濃度が高くなる。グループは、唾液が血液から作られ血液成分を反映していることに着目。唾液を分泌する唾液腺ではPSAが作られないことも確認した上で、前立腺がんの手術をした患者31人の血液と唾液中のPSAとの関係を調べた。

 その結果、術後に再発や転移が見つかった11人は、PSAの血中濃度が1ミリリットル中2.5ナノグラム(ナノは10億分の1)以上と高かった上、血中濃度が上がるにつれ唾液中の濃度も上がっていた。一方、経過が良かった20人は血中濃度が低く、PSAは唾液にもほとんど含まれていなかったという。【共同】(2011/7/2 9:17)

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