Likelihood Ratio 尤度比

Predictive Valueの求め方

診断のプロセスにおいて検査を施行することによって有病率=検査前確率 Pretest Probabilityが何%まで高められるかはその検査法のSensitivity/Specificityによって決まる。検査結果が陽性だった場合にその疾患である確率を陽性適中率 Predictive Value  of a Positive Testあるいは検査後確率 Posttest Probabilityというが、Sensitivity/Specificityから算出する方法以外にBayes' Theorem ベイズの定理を用いる方法、Decision Treeを用いる方法、Likelihood Ratio尤度比を用いる方法がある。

Likelihood Ratio 尤度比を用いる方法はSensitivity/Specificityを用いる方法にはない利点がいくつかある。その一つは計算が簡単だということである。Likelihood Ratioを用いて検査後確率を計算する場合にはオッズOddsを用いるので、まずOddsが何かをもう一度確認しておこう。

Odds

オッズは確率と同じことを意味するが、表現方法が異なるといえる。すなわちある事象が起きる可能性の多寡を表す指標であるが、これら二つの指標は互いに変換することが出来る。

オッズと確率の関係を式で表すと;

Odds = Probability/(1 - Probability)

Probability = Odds/(1 + Odds)

すなわち、オッズはある事象が起きる確率とそれ以外の事が起きる確率の比である。

検査前確率のかわりに検査前オッズをつかうとLikelihood Ratioを掛け算するだけで検査後オッズが得られ、それを変換すると検査後確率を算出することが出来る。実際にその計算をやってみる前にオッズと確率の関係を理解するためにいくつか実際の数値を上げてみよう。

表1.確率とオッズ
確率 確率% オッズ
0.01 1% 1/99=0.0101
0.1 10% 10/90=0.101
0.2 20% 20/80=0.25
0.5 50% 50/50=1
0.6 60% 60/40=1.5
0.8 80% 80/20=4.0
0.9 90% 90/10=9.0

オッズが1というのはその事象の起きる確率が0.5であるということである。オッズが1を超えるとその事象が起きる確率はそれが起きない確率より高くなる。逆に1未満ではその事象が起きる確率の方がそれが起きない確率より小さくなる。 確率0.2と0.8では後者が4倍起きる可能性が高い事象ということになるが、相当するオッズは0.25と4.0なので4倍になっていない。実際ProbabilityとOddsの関係をグラフで示すと図1のようになる。われわれの感覚では確率を相互に比較する方が直線関係にあるため理解しやすい。例えば、オッズが1は確率では0.5であり、オッズが10つまり10倍になっても確率は0.9なので10倍にはならない。

図1. 確率とオッズ。Y軸は対数表示。

 

Likelihood Ratio

さて、Likelihood尤度はここでは詳しく述べないが、条件付き確率 Conditional Probabilityに関係した概念で、Bayes'の定理とも関係している概念である。確率、オッズと同じくある事象が起きる可能性の多寡を示す指標と考えればよい。すなわち、ある条件下である事象が起きる確率のことである。下の表で疾患があるという条件下で検査結果が陽性であるという確率がLikelihoodであり、それを疾患の無いという条件下で検査結果が陽性であるという確率との比を算出するとLikelihood Ratioになる。

検査についてLikelihood Ratioが意味するところは疾患の無い人に比べて疾患のある人において陽性の結果が何倍得られやすいかということを表す。すなわち、疾患のある群における検査結果陽性の確率を疾患の無い群における検査結果陽性の確率で割り算した値である。言い換えると陽性率を偽陽性率で割り算した値である。

同様に陰性の結果が疾患のある人に比べて疾患の無い人で何倍得られやすいかも算出することが出来る。つまり、陰性率を偽陰性率で割り算した値である。

 表2:Likelihood RatioとSensitivity/Specificity
疾患あり 疾患無し
検査結果陽性 a人 b人
検査結果陰性 c人 d人

Likelihood Ratio of a Positive Test = [a/(a + c)] / [b/(b + d)]

Likelihood Ratio of a Negative Test =[d/(b + d)]/ [c/(a + c)]

Sensitivity = a/(a + c) x 100 (%)   False negative rate = c/(a + c) x 100 (%)

Specificity = d/(b + d) x 100 (%)   False positive rate = b/(b + d) x 100 (%)

100 - Sensitivity = False negative rate

100 - Specificity = False positive rate

従って、Likelihood Ratioが高いほど陽性率が高く偽陽性率が低いということであり、Sensitivityが高くSpecificityが高い検査ということになる。つまり、表現法は異なるが検査法の同じ性質を表しているといえる。

表3.Sensitivity/SpecificityとLikelihood Ratioの関係
Sensitivity (%) Specificity (%) Likelihood Ratio
99.9 99.9 999
99 99 99
95 95 19
90 90 9
85 85 5.67
80 80 4
70 70 2.33

オッズと尤度比で検査後確率を求める

これは非常に簡単である。例えば、検査前オッズが1/9(10%の確率に相当する)で、Likelihood Ratioが9だとすると、検査後オッズは1/9 x 9 = 1となる。これを確率で表せば50%ということになる。

Posttest Odds = Pretest Odds x Likelihood Ratio

検査前確率とSensitivity/Specificityを用いて計算すると、検査前確率が10%、Sensitivityが90%、Specificityが90%ということなので、検査後確率つまりPredictive Valueは(10 x 90/100)/[(10 x 90/100) + 90 x (100 - 90)/100] = 50 (%)となり同じ値が得られる。

オッズと尤度比を用いる方法の方が暗算で求められるほど計算が簡単であることが分かる。さらに二つの数値ではなく一つの数値だけが分かっていれば良いというのもLikelihood Ratioを用いる際の利点の一つである。

従って、オッズに慣れていればLikelihood Ratioを用いて検査後オッズを算出して、その検査を施行して陽性の結果が出るとその疾患に罹患しているオッズがどうなるかを考えることは容易に出来る。さらに、複数の検査を施行した場合の検査後オッズもただそれぞれの検査のLikelihood Ratioを順次掛け算するだけで算出することが出来るのでこれも容易である。ただしこれが適用されるにはそれぞれの検査が独立しているとの仮定が必要である。

一定の範囲をとる検査結果への尤度比の応用

 数値で結果が表される検査の場合にそれをいくつかの範囲に分けて、順序変数 Ordinal variableとして扱うことが出来る。疾患がある群と無い群でオーバーラップがある場合に疾患の無い群の上限を超えれば疾患があると診断できるし、疾患のある群の下限を下回れば疾患が無いと診断できる。その中間はLikelihood Ratioを求めることによってその範囲の値が得られた時にその疾患である確率を計算することが可能になる。

表4. 甲状腺機能低下症と健常者における血清Thyroxine濃度
血清Thyroxine(μg/dl) Hypothyroid (実数、%) Normal (実数、%) Likelihood Ratio
<1.1 2 (7.4)
1.1-2.0 3 (11.1)
2.0-3.0 1 (3.7) Ruled in
3.1-4.0 8 (29.6)
4.1-5.0 4 (14.8) 1 (1.1) 13.8
5.1-6.0 4 (14.8) 6 (6.5) 2.3
6.1-7.0 3 (11.1) 11 (11.8) 0.9
7.1-8.0 2 (7.4) 19 (20.4) 0.4
8.1-9.0 17 (18.3)
9.1-10 20 (21.5) Ruled out
10.1-11 11 (11.8)
11.1-12 4 (4.3)
>12 4 (4.3)
Total 27 (100) 93 (100)

*Goldstein BJ, Mushlin AI: Use of single thyroxine test to evaluate ambulatory medical patients for suspected hypothyroidism. J Gen Intern Med 1987;2:20-24.より引用。
**Likelihood Ratioは各カテゴリーに属する人のパーセントの比として算出される。すなわち疾患がある群のパーセントを疾患の無い群のパーセントで割り算した値である。

この表から例えば、血清Thyroxineが5.5μg/dlだったとするLiklihood Ratioが2.3なので、もし問診、診察から甲状腺機能低下症の検査前確率が40%だった例があったとすると、検査前オッズ=40/60であるから、40/60 x 2.3 = 1.53が検査後オッズになり、検査後確率は1.53/(1 + 1.53) = 60.5%となる。

もともと名義変数をとる検査結果についても同じ方法を適用することが出来る。

図1、Likelihood Ratio計算およびPosttest Probability計算のためのExcelの表ダウンロード。(Windows WinZIPの自己解凍型ファイル、ファイルサイズ30KB)。

(1999.2.13 神奈川歯科大学 内科 森實敏夫) 



文献
Fletcher RH, Fletcher SW, Wagner EH: Clinical epidemiology: The essentials. (3rd edition), 1996, Williams & Wilkins, Baltimore, USA.


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