内田俊和 先生

1999年3月19日:第15回臨床医のための神奈川肝臓病理研究会における教育講演

「終末期・死戦期の肝病変」

循環障害

肝細胞はSinusoid類洞の内皮細胞の外側のDisse腔でリンパ液に接しており、直接血液には接触していない。Slide 1 Slide 2

心肺の障害でIschemia虚血が起きるとその結果Disse腔に赤血球が充満するが、それは類洞内皮細胞が障害を受けるためである。Slide 3 Slide 4

さらに障害が進むと肝細胞索Hepatic Cordが赤血球に置き換えられ血清ALT値が数千と高値になる。Slide 5

さらに障害が進むと肝細胞の凝固壊死が起きる。Slide 7

それを生き延びると好中球が浸潤してくる。Slide 6

虚血では全肝の全小葉に障害が起きる。劇症肝炎でリンパ球が消えた状態に似ているが虚血の場合には肝細胞の凝固壊死が起きる。

生き残った肝細胞にはPale Bodyが認められる。(酸素欠乏に対して反応した結果血漿成分が肝細胞に取り込まれたものではないかと推測される)。凝固壊死との境界部に出現する。Slide 8

さらに経過するとEosinophilic Body(Solid Body)も出現する。これはIgGやIgMが染色されるので成分としてこれらを含んでいる。Fibrinの析出も起きる。また、Pale Bodyが空胞Vacuoleのように見えることもある。Slide 9

すなわち、2種類のInclusion Bodyが境界部に見える。Slide 10 Slide 11 Slide 12 Slide 13
 

また、Intrasinusoidal Ghost Body=Blebが類洞に突出しているのが観察される。(酸欠状態に対して細胞の表面積を広げる反応であるかのように見える)。この所見は劇症肝炎では見られない。Slide 14

Anoxiaで胆汁鬱滞が起きることがある。そのため総ビリルビン値が上昇する。Slide 15

時間が経過すると、脱落した肝細胞の場所に線維が出てくる。Slide 16 Slide 17

循環障害は1)Anoxiaと2)Congestionの2つあるが、両者が混ざって区別できないことも多い。
 

門脈炎 Portal Phlebitis

細菌性の門脈炎が胃癌の術後など1週間位で死亡した例などで認められることがある。

発熱など細菌感染を思わせる症状が出る。胆管炎と間違えられることもある。

門脈域は炎症が波及し、Slide 18 Slide 19

肝細胞が破壊されたり,血栓が形成される。Slide 20 Slide 21 Slide 22 Slide 23

二次的に胆管炎も起きるので胆管炎,PSCなどと間違われることがあるSlide 24

門脈がつぶれて死亡するケースもある。

敗血症Sepsis、Endotoxemia、Extrahepatic Severe Infection

EndotoxinやExotoxinが肝に流れてきて肝障害を引き起こす。Mechanical Biliary Obstructionと間違えられやすい。Slide 25

Kupffer Cell Hypertrophyが特徴的である。Endotoxinを処理するために,クッパー細胞が肥大すると考えられる。TNF、Oxidative Stressによりクッパー細胞が活性化され赤血球貪食Erythrophagocytosis、時にはリンパ球貪食Lymphocytophagocytosisが起きる。(リンフォーマでもリンパ球貪食が起きることがある)。Slide 26

同時に胆汁鬱滞が起きる。毛細胆管Bile Canaliculiに胆汁栓ができる。サイトカインネットワークが崩れるためではないかと推測されるが,まだその機序は不明である。これらの所見は小葉中心部に多い。Slide 27

肝細胞がHydropic Swelling水腫様腫大を起こすことや,羽毛様変性Feathery Degenerationを起こすこともある。Slide 28

この様な場合には血清ALT値が高くなっている。Mallory Bodyが沈着することもある。Slide 30

胆汁鬱滞が強いと門脈域で肝細胞が脱落した後にBile Ductulesができ,胆汁栓が形成される。頻度は低いが胆汁栓が出てくることもある。Slide 33 Slide 31 Slide 32

肝細胞が肝細胞索の中に残った状態で孤立性に凝固壊死に陥っていることがある。Slide 34

死戦期には循環障害や敗血症によって肝病変が引き起こされる。剖検例の5人に1人はこのような病変が認められる。



(これは内田俊和先生の講演を森實がまとめ内田先生よりお借りしたスライドをスキャンして掲載したものです。1999.5.6)


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