原発性胆汁性肝硬変(PBC)に合併する他臓器自己免疫疾患
-内外症例の臨床統計と分析-
川崎中央病院内科 上野幸久
昭和大学医学部第二内科 柴田 実
川崎中央病院検査部 小野塚 靖
はじめに
原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis:PBC)は、中年以降の女性に好発す
る慢性進行性肝内胆汁うっ滞疾患である。本疾患は1851年にAddisonらが初めて報告
し、その後1876年にHanotらがhypertrophic cirrhosis、1938年にThannhauserらが
xanthomatous biliary cirrhosis、1946年にWatsonらがcholangiolitic cirrhosis、19
48年にMacMahonらがbiliary xanthomatosisと呼称し、1950年にAhrensらがPBCという
名称とその疾患概念が確立した。1965年に抗ミトコンドリア抗体(anti-mitochondrial
antobody:AMA)の測定が行われ、1987年に抗M2抗体の主要対応抗原であるpyruvate
dehydrogenase complex-E2(PDH-E2)の遺伝子がクローニングされ、ELISA法やWestern
blot法で測定可能となった。その結果、黄疸や掻痒感を欠く無症候性PBC(a-PBC)が多
数発見され、肝硬変は本症の末期病変に過ぎないことも明らかとなった。従って本症
を“肝硬変”と称することは適切でなく、むしろLacerdaら1)やGoodmanら2)が主張す
るようにAMA陰性例も含めて広く自己免疫性“胆管炎”として包括することが妥当と
考えられる。
発症機序に自己免疫異常の関与が推定されており、免疫応答の標的が小葉間胆管お
よび中等大隔壁胆管にあること知られているが、正確な成立病理は不明である。PBC
では掻痒感、黄疸、腹水、黄色腫のような胆汁うっ滞や肝障害に関連した症状の他に
種々の代謝異常や自己免疫異常に関連した合併症が認められる。自己免疫疾患の合併
は本症の成立に自己免疫異常が関与する傍証ともされている。
本稿では、PBCに併発する自己免疫疾患を中心にして合併症の種類、頻度および臨
床的意義について、自験例の成績および内外症例の報告を比較分析する。解析した文
献は主に過去25年間にMedlineに掲載された原著論文とし、その他に総説、症例報告
および厚生省特定疾患難治性の肝炎調査研究班報告などの加えた。
PBCの合併症:自験例について
一般にPBCの60〜70%に種々の合併症が認められる3,4)。合併症は無症候のものから
、生活の質(Quality of life:QUL)を高度に低下されるものまで多彩である。発症機
序に自己免疫異常が関与するものと関与しないものに大別できる(表1)。前者は肝病
変の重症度に無関係なことが多く、後者は肝病変の重症度や胆汁うっ滞およびそれに
関連した種々の代謝障害に関連することが多い。
1.背景
筆者らが経験したPBC症例は1980年〜1997年に川崎中央病院の69例をはじめとして
都立荏原病院、富士吉田市立病院、三宿病院をあわせて97例である。男性が19例、女
性が78例、年齢が平均57.8歳±12.0歳(30歳〜86歳)であった。60歳以上の高齢者が44
例(45%)と高率であったが、年齢と自己免疫疾患の合併率には一定の傾向は認められ
なかった。a-PBCが58例、症候性PBC(s-PBC)が39例であり、無黄疸のs1-PBCが28例、
黄疸を有するs2-PBCが11例であった。肝生検は89例に実施され、肝組織所見でScheuer
2期以下が72%を占めた。転帰は平均5.5年の観察で19例(20%)が死亡した。死因とし
ては14例が肝不全、1例が食道静脈瘤からの出血、1例が肝細胞癌、2例が心血管疾患、
1例が脳出血であった。
2.自覚症状および合併症
自覚症状では掻痒感が36%と最も高頻度であり、右季肋部の鈍痛および不快感が19%
に認められ、その半数が胆石を合併していた。
自己免疫異常に関連した疾患および症状の合併は、Sjogren症候群(SjS)が33%と最
も高頻度であった(表2)。関節炎の合併が次に多く22%であり、その程度はほとんどが
軽症で、コルチコステロイドの投与を必要としたのは2例のみであった。強皮症が11%
に、Raynaud現象が8%に、CREST症候群(Calcinosis:石灰沈着、Raynaud現象、Esophag
eal hypomotility:食道の運動低下、 Sclerodactyly:手指硬化、Telangiectasia:毛
細血管拡張)が4%に合併した。CREST症候群は全例が不全型であり、嚥下障害や皮下石
灰化は認められなかった。しかし一方、CREST症候群は合併していないが、食道下部
の可逆性狭窄を合併した早期PBCを1例経験した。
自己免疫異常に関連しない合併症では門脈圧亢進症が20例(21%)に認められた。門
脈圧亢進症を合併した時点の肝組織所見はScheuer2期以下が5例(24%)、Scheuer3期が
7例(33%)、Scheuer4期が9例(43%)であった。胆石が20%に見出され、胆嚢炎が1例で観
察された。高尿酸血症が7例(7%)で認めらた。高尿酸血症合併では1例を除き全例が女
性であり、1例がs1-PBC、6例がa-PBCで、肝組織所見は全例がScheuer2期以下であっ
た。一般に女性で高尿酸血症はきわまてまれであるから女性の高尿酸血症では一応PB
Cを疑う必要があろう。悪性疾患が5例に認められ、肺癌、大腸癌、乳癌、胃癌および
肝細胞癌であった。肝細胞癌はScheuer4期の男性PBCに合併し、肝炎ウイルスの感染は
認められず、発癌2年後に死亡した5)。
3.自己抗体
AMAは79%、抗核抗体(anti-nuclear antibody:ANA)は74%、抗平滑筋抗体(anti-smoo
th muscle antibody:ASMA)は11%で検出された。PBCに関連の深いANAとして、抗核膜
抗体(anti-nuclear envelope antibody)が33%、抗セントロメア抗体(anti-centromere
antibody: ACA)が27%、抗核膜抗体の主要対応抗原のgp210に対する自己抗体(抗gp2
10抗体)が18%、抗nuclear dot抗体(抗sp100抗体)が9%に検出された(表3)。
AMAとANAの関係では、56%がいずれも陽性、24%がAMA単独陽性、19%がANA単独陽性
であり、2%がAMAとANAが共に陰性であった(表4)。AMA陰性の20例では抗核膜抗体が7
例(35%)、抗gp210抗体が6例(30%)、抗nuclear dot抗体が2例(10%)で検出され、AMAと
補完性が認められた。
4.性差
年齢、臨床病期、肝機能、肝組織所見および予後には差が認められなかったが、自
己免疫疾患の合併が男性では26%であるのに対し、女性では60%と有意に高値であった
(表4)。疾患ではSjSで有意な性差が認められた。Raynaud現象は女性の10%に認められ
たが、男性では1例も認められなかった。自己抗体ではACAの検出頻度が有意に女性で
高値であった(p<0.05)。抗核膜抗体、抗gp210抗体、抗ND抗体には性差が認められな
かった。SjSおよびRaynaud現象の併発がほとんど認められないことが男性PBCの特徴
と推定された6)。
内外文献の比較分析
1.自己免疫的合併症
自己免疫疾患全体の合併頻度は、Clupら7)は84%、Christensenら8)は16%、西岡ら9)
が21%、佐々木ら10)が26%、高木ら11)が63%と報告している。合併疾患数が複数とな
ることも少なくない。Clupらは自己免疫疾患合併の41%が2つまたはそれ以上を合併し
たと報告した7)。自験例では自己免疫疾患の合併が54%に認められ、その35%が複数の
自己免疫疾患を合併した(表2)。
内外諸家の報告によるとPBCで最も高頻度に認められる自己免疫疾患はSjSであり、
続いて関節炎、強皮症、甲状腺疾患などであるる(表5)12-14)。全国調査の合併症頻
度が低値なのは調査方法にバイアスが介入するためと推定される。
a.Sjogren症候群(SjS)
唾液腺や涙腺などの外分泌腺が免疫応答の標的となり、口腔乾燥症や眼乾燥症など
の乾燥症(sicca症候群)および種々の自己免疫現象を合併する。SjS単独のものを一次
性SjS、種々の自己免疫疾患を併発するものを二次性SjSと分類する。自己免疫疾患の
合併では腎障害、血管炎、神経障害、精神障害、肺病変(リンパ球性間質肺炎)、偽リ
ンパ腫、非ホジキンリンパ腫などの合併が高頻度に認められる15)。
診断では乾燥性角結膜炎(keratoconjunctive sicca:KCS)、口腔乾燥症状、唾液腺
組織への単核球浸潤の存在が重視されており、わが国では厚生省「Sjogren病」研究
班による診断基準が用いられている。唾液腺造影や唾液腺生検で特徴的所見が得られ
る。
Sicca症候群の全てが乾燥症状を自覚するわけではない。無症候性も含めるとPBCの
70%にsicca症候群が、30%にSjSが合併すると報告されている16,17)。PBCでは多くが
二次性SjSに分類され、抗SS-A抗体(抗Ro抗体)や抗SS-B抗体(抗La抗体)およびHLAB8や
DR3の検出率は必ずしも高くない18)。SjSについて検査すると肝機能異常が5〜10%で
認められ、自己免疫性肝炎やC型慢性肝炎の合併も比較的高率に認められる20,21)。
SjSが予後へ及ぼす影響は少ないと推定されている。治療では眼科および歯科的処
置で二次感染を予防し、点眼薬や人口唾液の投与で自覚症状を改善する目的で行われ
る。UDCA使用中にSjSが寛解する症例を経験するが、その効果か否かは断定し難い。
b.全身性強皮症(強皮症)
PBCに認められる皮膚病変としては強皮症、扁平苔癬、白斑、皮膚掻痒感、黄色腫
、色素沈着および脱失などが認められる。結節性紅斑はサルコイドーシス合併で認め
られる。
強皮症は皮膚、消化管、肺、心臓、腎臓などに炎症性変化および線維化をきたす全
身疾患である。予後、重症度および臓器障害の程度は多彩である。軽症では長年にわ
たり手指硬化のみを示し、重症では皮膚病変と他臓器障害を有し短期間に進展する。
PBCに合併する強皮症の大半が手指に限局する軽症型で、まれに軽度の食道の運動障
害や肺の拡散機能障害程度を認める。
診断は皮膚硬化、抗トポイソメラーゼ抗体の検出、皮膚生検などで行われる。
皮膚硬化は内科医では見落とすことが少なくなく、皮膚科に依頼して診断する
べきである。わが国では厚生省特定疾患「強皮症」調査研究班により強皮症診断基準
(案)が作成されている。
PBCの約10%でCREST症候群の合併が認められる21)。強皮症やCREST症候群ではACAの
出現を特徴とするが、必ずしも特異的ではない22,23)。PowellらはCREST症候群を合
併しACAが検出されるPBCを"PACK"症候群(PBC, ACA, CREST, KCS)と呼称するよう提唱
した24)。PACK症候群が独立した疾患と捉えられるか議論されている。
CRESTの一症状でもある燕下障害は軽症も含めるとPBCの28%に認められ、sicca症候
群合併では47%と高率との報告が認められる25)。強皮症からみるとPBCを合併するこ
とは稀であり、強皮症は健常対照と比べ肝機能異常が認められる頻度に差はない26)。
c.関節症、関節炎
PBCの25%でリウマチ因子が検出され、関節痛および関節腫脹、変形などの関節症の
合併が4〜50%に認められる27)。関節症は近位指節関節や手関節などの中小関節に好
発する慢性関節リウマチ様の多関節炎が高頻度に認められる。PBCにおける関節症は
、慢性関節リウマチ、CREST症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、W
egener肉芽腫症、リウマチ性多発筋痛症、皮膚筋炎、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、
乾癬性関節炎、肥厚性骨関節症、軟骨石灰化症、神経性関節症、黄色腫性神経症など
の合併に関連して発生する13)。
d.甲状腺機能障害
欧米では甲状腺機能異常や抗甲状腺抗体が約15〜26%で認められる13,28)。Croweら
の報告ではPBCの26%で抗甲状腺抗体が検出され、その52%に甲状腺機能異常を認めて
いる28)。自験例では橋本病は3例(3%)に過ぎず、国内の諸家の報告も10%以下と低頻
度である。欧米の報告との差は地理病理学的差によるものと推定される。一般に慢性
甲状腺炎(橋本病)がより高頻度に認められ、Basedow病(Graves病)はまれである。無
症候性が多く、TSHの測定がスクリーニング検査に適している。慢性甲状腺炎の合併
は高コレステロール血症の増悪因子の一つとなる。
2.自己抗体
PBCの自己抗体に関する最近の話題では、抗核膜抗体および抗nuclear dot抗体が新
たに発見され、PBCに高い特異性を有することが報告された29-33)。抗核膜抗体の主
要対応抗原は核膜孔に局在するgp210と同定されている。PouponらはAMAが陰性でも抗
gp210抗体あるいは抗sp100抗体が検出されればPBCと診断してよいと述べている13)。
厚生省特定疾患難治性の肝炎調査研究班による全国調査12)では、AMAが84%、ANAが
27%で検出された。自験例のAMA陽性率は全国集計に一致したが、ANA陽性率は74%と高
値であった。自験例の抗核膜抗体あるいは抗nuclear dot抗体陽性23例ではそれ以外
のANAは検出されなかった。全国集計およびその他の報告でANA陽性率が低いのは、抗
核膜抗体と抗nuclear dot抗体の測定が行われていないためと推定される。PBCにおけ
るANA陽性率を比較するためには、抗核膜抗体および抗nuclear dot抗体の測定が必要
と考えられる。
2.自己免疫異常との関連が少ない合併症
a.門脈圧亢進症
門脈圧亢進症は脾腫および食道静脈瘤の合併の原因となる。食道静脈瘤の出血はま
れにPBCの初発症状としても報告されている。PBCにおける門脈圧亢進の発生機序には
、門脈炎および門脈周囲炎による小門脈の閉塞による類洞前閉塞および二次的な結節
性再生性過形成(NRH)の関与が推定されており、肝硬変に進展する以前より発生する
ことがあるり34)。自験例でも前述の如く門脈圧亢進症合併例の約半数以上が非硬変
であった。
b.胆石
PBCの17%で右上腹部痛が認められ、原因の一部に胆石の関与が推定されている。胆
石の合併は31〜39%と高頻度であるが、ほとんどが無症状である13)。筆者らは単なる
胆石症として手術を受け、数年後に漸くPBCと診断された症例を少なからず経験して
いる。
c.骨病変
10〜35%で骨軟化症や骨粗鬆症などの骨病変の合併が認められる。骨粗鬆症は閉経
以後の女性患者に多く、骨軟化症はまれである13)。骨病変の発症には、腸管でのビ
タミンDの吸収不全、腎尿細管性アシドーシス、腎障害、加齢、性機能不全、遺伝的
なビタミンD受容体異常の可能性などの関与が推定されているが、完全には解明され
ていない。
d.肺病変
39%で肺拡散機能障害が認められるが、ほとんどが無症状である35)。進展すると低
酸素血症、肺内血管拡張、肝肺症候群および肺高血圧症をきたす。CREST症候群やSjS
合併例では肺線維症が認められる。サルコイドーシスや他の肉芽腫性肺疾患の合併が
報告されている。わが国では本症における肺病変について未だ注目されることが少な
いが、今後詳細に検索する必要がある。
e.腎病変・尿路感染
尿細管への銅の沈着により、腎尿細管性アシドーシス、低尿酸血症および高尿酸血
症の合併が認められる。腎尿細管性アシドーシスは比較的高率に認められるが、代謝
性アシドーシスによる筋力低下、悪心、嘔吐、口渇、多尿を訴えることはほとんどな
い。少数例で糸球体腎炎および間質性腎炎の併発が報告されている。
PBCの19%で尿路感染が、34%で再感染が認められると報告され、大腸菌とPDH-E2に
交叉抗原性より発症機序との関連が注目された。その後否定的な報告も認められ、尿
路感染とPBCの発症機序との関連は証明されていない。
f.神経障害・精神障害
末梢神経障害が40%に、自律神経障害が63%に認められると報告されている36)。前
者では知覚神経障害が、後者では副交換神経に関連した心血管系障害が多く認められ
る。神経障害は肝病変の重症度に相関することが多く、高脂血症やビタミンE欠乏の
関与が指摘されていたが、否定的な意見もある。PBCと精神異常との関連が報告され
ている。特にSjS合併では、心理テストで性年齢を一致させた健常対象より有意に不
安が強い37)。
g.膵病変
膵管造影による形態異常、膵組織の炎症所見と線維化、血中トリプシン、リパーゼ
、アミラーゼ値の上昇など慢性膵炎を示唆する所見が50〜73%で認められるが、ほと
んどが無症候性で臨床的に問題とはならない。膵病変の発生機序は不明であるが、
SjS合併例で高率に認められる。PBCで涙腺、唾液腺上皮、気管支上皮、胆管上皮、膵管
上皮、胃腺上皮、腎尿細管上皮などの外分泌腺上皮が高頻度に障害されることから、
本症をdry gland syndromeを捉えることも提唱されている38)。
3.早期PBCと自己免疫疾患の合併
1986年にMitchisonらは胆道系酵素の上昇が認められないPBCが存在する可能性を指
摘し、その後のcohort研究によりその仮説を証明した39)。彼等は、1)肝疾患に伴う
臨床症状を認めず、2)総ビリルビン、ALP、GOTが正常、3)AMA40倍以上陽性、4)肝組
織所見がPBCもしくは矛盾しない例を早期PBC(early PBC)と呼称した。わが国におい
ても筆者らを初めとして胆道系酵素正常のPBCが報告されている40-42)。
自験例の早期PBCの成績を示す(表6)。11例中6例(55%)で自己免疫疾患が合併した。
関節炎が4例、SjSが3例、強皮症が1例、Raynaud現象が3例に認められ、合併疾患の種
類は通常のPBCと同じであった。自己免疫疾患やRaynaud現象の存在、ACAや抗核膜抗
体などの自己抗体の出現およびIgM高値が早期PBC発見の契機となる。最近のMetcalf
らの報告の如く、その一部は症候性に移行するが、長期観察しても早期PBCの状態に
とどまるものも少なくない。筆者らも同様の症例を経験しており、それらが通常のPBC
と異なるサブタイプである可能性もあり、今後の検討が必要がある43)。
PBCにおける自己免疫疾患合併の臨床的意義
PBCにおける自己免疫疾患の合併の臨床的意義としては、1)PBC発見の契機となる、
2)患者のQOLを低下させる、3)まれに生命予後に関連するなどがあげられる44)。自己
免疫疾患の合併を認めても、患者がPBCに関連していると知らずに、外科、皮膚科、
耳鼻科、眼科、整形外科、膠原病専門外来などに受診することがある。各科の医師が
PBCに対する認識を深め、疑わしい患者は早期に肝臓専門医に依頼することが望まれ
る。高度な関節炎は歩行障害をきたし、SjSやCREST症候群では食事摂取困難となる場
合がある。PBCの診療では肝の治療のみでなく、全身的に観察し合併症に対する診断
と治療もQOL改善のために重要である。
Beswickらはa-PBCを平均11.4年観察し、死亡した8例中4例で、生存している28例中
3例で自己免疫疾患の合併が認められ、自己免疫疾患合併は予後不良と関連した(p=0.01)
と報告した45)。しかしこの報告では交絡因子に関する検討が不完全であり、自己
免疫疾患合併と予後不良の関連性を証明したことにはならない。自験例の成績では、
自己免疫疾患の合併が死亡例では19例中10例(53%)、生存例では78例中43例(55%)に認
められ差が認められなかった。PBCの予後のほとんどは肝疾患の進行速度と重症度に
関連し、現時点では自己免疫疾患合併が生命予後を危険にさらすことはほとんどない
と推定されている。
謝辞:川崎中央病院内科 佐藤源一郎先生、吉田直哉先生、同検査部 山上朋之先生
、富士吉田市立病院内科 高橋正一郎先生の協力に感謝いたします。
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1例。日臨免誌 16:165-169,1993.
41)柴田 実ほか:一般肝機能検査が正常にもかかわらず、皮膚掻痒感とレイノー症
状が診断の手がかりとなった原発性胆汁性肝硬変(PBC)の1症例。病理と臨床 8:533-
536, 1990.
42)柴田 実ほか:原発性胆汁性肝硬変早期例に関する臨床的および病理学的検討。
肝臓 31:1400-1405, 1990.
43)柴田 実:早期PBCの診断とその意義。medicina 35(1):998 (印刷中)
44)柴田 実:原発性胆汁性肝硬変(PBC)の診断と治療の基本。medicina 35(1): 1998
(印刷中)
45)Beswick DR et al: Asymptomatic primary biliary cirrhosis. A progress report
on long-term follow-up and natural history. Gastroenterology 89: 267-271,
1985.
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