Liver Disease in Pregnancy
Knox TA and Olans LB
N Engl J Med 1996;335:569-76.
妊娠に伴う肝疾患に関する総説です。一部モディファイして簡単にまとめておきます。

妊娠に伴う検査値の異常:
血清アルブミン値は血漿容積の拡大により平均値が4.2g/dlから3.1g/dlへ低下、血清ALP値は胎盤由来が増加し5ヶ月以降上昇し2から4倍になる。

AST, ALT, γ‐GTP、ビリルビン値は正常範囲にとどまる。正常妊娠時の肝生検は異常所見を示すことはない。

肝脾腫はないが実際には触診は困難なことが多い。顔面、胸部、背部の毛細血管拡張や手掌紅斑は正常妊娠の60%に観察され、出産後は消失する。

肝疾患の呈する症状と考えられる疾患:
 
症状 妊娠に伴う肝疾患 妊娠期(Trimester) 妊娠特有ではない肝疾患
掻痒感 itching Intrahepatic cholestasis of pregnancy 2 - 3 PBC
Drug-induced hepatitis
黄疸 Jaundice Hyperemesis gravidarum
Intrahepatic cholestasis of pregnancy
Dubin-Johnson syndrome
Acute fatty liver of pregnancy
Preeclampsia or eclampsia
HELLP syndrome
1
 

2 - 3
3

2 - 3
2 - 3

Choledocholithiasis
Acute viral hepatitis
Drug-induce hepatitis
Exacerbation of underlying liver disease: CH, AIH, PBC, Wilson's disease
上腹部痛(心窩部痛または右季肋部痛) Upper abdominal pain (epigastic or right upper quadrant) Acute fatty liver of pregnancy
Preeclampsia or eclampsia
HELLP syndrome
Acute hepatic rupture
Budd-Chiari syndrome
3

2 - 3
2 - 3
3
3

Biliary tract disease
Gastroesophageal reflux
Acute viral hepatitis
Peptic ulcer disease
嘔気または嘔吐 Nausea or vomitting Hyperemesis gravidarum
Acute fatty liver of pregnancy
Preeclampsia or eclampsia
HELLP syndrome
1
3

2 - 3
2 - 2

Biliary tract disease
Acute viral hepatitis
Drug-induce hepatitis
Viral sundrome
DICを伴うあるいは伴わない血小板減少 Thrombocytopenia with or withour disseminated intravascular coagulation Acute fatty liver of pregnancy
Preeclampsia or eclampsia
HELLP syndrome
3

2 - 3
2 - 3

Fulminant hepatitis
Cirrhosis
Thrombotic thrombocytopenic purpura
Hemolytic-uremic syndrome
 

各肝疾患の特徴:

Hyperemesis Gravidarum
嘔気・嘔吐により特徴づけられる。重篤な場合には脱水、低栄養に陥る。最初のTrimesterに起こり、遅くとも20週までである。肝組織は正常か脂肪変性が認められる程度であるが、4mg/dl以下の血清ビリルビン高値、ALPが2倍、ALT、ASTは200U/l程度に上昇することがある。栄養状態の改善によりこれらの異常は正常化する。症状が強い場合にはそうでない場合と比べ出生児の体重は低い。

Intrahepatic Cholestasis of Pregnancy
普通第3妊娠期、平均で30週で起きる。病因は不明である。皮膚掻痒感(Pruritus Gravidarum)は体幹部、四肢、手掌、足底部に認め、夜間に増強する。黄疸は20-60%の女性で、掻痒感出現後1-4週で出現する。灰白色便や尿の濃染などの閉塞性黄疸の症状を認めることもあるが、全身症状はない。これらの症状は出産後速やかに消失する。家族歴がある女性、経口避妊薬服用で胆汁うっ滞を起こしたことのある女性に起きやすい。

血清ビリルビン値は6mg/dlを超えることは稀である。ALPは4倍、ALT, ASTは2倍から10倍に上昇する。稀にはこれを超える例の報告もある。血清総胆汁酸濃度の10から100倍の上昇が最初の検査異常であることが多い。肝生検は不要であるが、組織像は炎症性変化はごく軽度か認めず、胆汁うっ滞のみ認める。

未熟児あるいは死産の率が上昇する(3.5%)。Cholestyramine(10-12g/日)は掻痒を軽減するかもしれない。Vitamin Kの予防的な非経口投与が出産後の出血に対して有効である。

Acute Fatty Liver of Pregnancy
1万3千の出産に1回の率で発生。多胎妊娠あるいは初めての妊娠で起きやすい。平均で36週に起きるが、28週で起きたという報告もある。症状は非特異的で、嘔気・嘔吐(70%)、右季肋部痛・心窩部痛(50-80%)、ウイルス感染を思わせる倦怠感・食欲不振を訴える。これらに続き、1-2週で黄疸が出現するが、掻痒感は稀である。もし治療しないと、劇症肝炎に進展し、脳症、腎不全、膵炎、消化管出血、子宮出血、DIC、痙攣、昏睡、死亡にいたる。

AFLPの診断がつけばすぐに妊娠を中断すべきである。黄疸、肝障害、DICは出産後1-2週間は続く可能性があるが、その後改善する。

1980年以降の母親、胎児の死亡率は20%以下になった。(それ以前は85%) 生存者は完全に回復し、2回目以降の妊娠でAFLPを再発することはきわめて稀であり、2例の報告があるのみである。

Preeclampsia、Eclampsia
Preeclampsiaの3徴は1)高血圧(収縮期圧の30mmHg、拡張期圧15mmHg以上の上昇あるいは140/90mmHg以上の血圧)、2)蛋白尿、3)浮腫である。Preeclampsiaは視覚の異常、頭痛、浮腫、反射亢進、眼底の変化、蛋白尿、高尿酸血症で気づかれる。Eclampsiaはこれらの症状に加え、痙攣、昏睡が認められる。原因は不明であるが、血管内皮細胞の異常が指摘されている。重症例では脳浮腫、肝梗塞、急性腎不全、心不全、呼吸促迫が出現することもある。

Preeclampsiaは5-10%に認められ、第2妊娠期の終わりから第3妊娠期に起きる。Preeclampsiaのリスクファクターは高血圧、高齢妊娠、初めての妊娠、多胎妊娠である。重症度は発症時期と症状の強さによる。母親の死亡率は1%以下であり、死亡の80%は中枢神経の障害による。

HELLP Syndrome
HELLP (hemolysis, elevated liver enzymes, and a low platelte count) syndromeは重症のPreeclampsiaの合併症である。全妊娠の0.1から0.6%に、重症のPreeclampsiaの4から12%で起きる。70%は27から36週に起こり、3分の1は出産後に起こる。Microangiopathic, hemolytic anemia, 血清LDH, ALT/AST(2から10倍)、血小板減少(10万以下)が出産後1-2日でピークに達する。

右季肋部痛・心窩部痛(65-90%)、倦怠感(90%)、嘔気・嘔吐(36-50%)、頭痛(31%)を認めるが、黄疸は5%のみ。右季肋部の圧痛(80%)、浮腫による体重増加(60%)、高血圧は20%の例で認めない。

母親の死亡率は1-3%。合併症はDIC(20%)、胎盤剥離(16%)、急性腎不全(7%)、肺浮腫(6%)である。胎児の死亡率は35%(10-60%)で発症時期と重症度により決まる。出生児は未熟児のリスクが高いだけでなく、血小板減少のリスクも高い。次の妊娠での再発は3-27%である。

出産がPreclampsia, Eclampsia、HELLP Syndromeの治療である。出産後2日間がもっとも重症なので血液製剤の投与など適宜行う。36週以降にEclampsiaが起きた場合には、もし胎児の肺が成熟していれば出産させるべきである。第3妊娠期で軽症のPreclampsiaであれば胎児の肺の成熟を待った方が良い。34週未満のPreeclampsiaの治療法に関してはいろいろ議論されている。コルチコステロイドが有用との報告もある。

Budd-Chiari Syndrome
きわめて稀であるが、肝静脈血栓により引き起こされる。腹痛、肝腫大、腹水が3徴である。
 


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