「腹部超音波検査(スクリーニング・肝)のコツ」page 2

東邦大学医学部第二内科 住野泰清 1997.10.9


F肋弓下横走査による肝実質の観察

目的:ブラインドになりやすい部位をわきまえた確かな観察.

方法:原則として深吸気で行う.観察は図11〜15のごとく横隔膜直下右葉ドーム→右側面を含む右葉中部(観察が困難な場合は図12のごとく左側臥位にするとよい)→腎を含む右葉下部→右葉中央上方→右葉中央肝門部周辺→横隔膜直下左葉ドーム→左葉中央→左葉左縁の順で画像の記録を行いながら流れるように進める.次いでブラインドになりやすい肝前縁を左葉から右葉までまんべんなく縦走査で観察する(図16).さらに呼吸は自由にしてもらいながら右肋間走査で右葉を上から下まで観察する(図17).検査中に病変を見つけた場合には,とにかく一通りスクリーニングを終えた後,病変の観察にもどる.それが限局性病変の場合には,少なくとも2方向から十分に観察し記録をとる.びまん性病変の場合には特徴的な所見を記録する.


メモ:画像記録部位は図18に示したブラインドになりやすい部位と一致するようにしてある.ブラインドの画像がきれいに撮れていれば,その他の部位は充分に観察されているだろうと考えて決めたものである.当然,決められた部位の記録を評価に足る条件でとるのは難しく,初心者の間はその記録に心を奪われ,その他の容易に観察できる部位の病変を見逃しがちである.しかし教育の現場ではこれでよいのではないかと思っている.観察しやすい部位の病変を見つけて慢心し,ブラインドはいつまでたってもブラインドというよりは,ブラインドをなくす術をまず身につけた方が将来信頼性の高い検者に育ってくれる可能性が高い.実際,筆者の施設の若者は皆,良い方向に向かっている.  腹部の検査に際して最も重要なポイントの一つは患者の呼吸のコントロールである.見ていると,大きくおなかを膨らませながら息を吸うように患者に強制している場面によく遭遇する.確かにこの手法をとると肝臓は楽に観察できるが,図19に示すごとく,肝上方を見上げようとすると探触子の接触面が浮いてしまい不都合である.それに気づかず見上げできれいな画像が出せないと悩む人は意外に多い.胸式呼吸,腹式呼吸,呼吸せずにおなかだけ膨らますなど,自分が見たい部分を見やすくする「患者の呼吸操作法」をまず身につけるべきであろう.  肋間走査における探触子操作法のテクニックとしてもう一つ重要なことを付け加えておく.それは図20に示したように,肋間であっても探触子を上下にずらしながら走査する方法である.多くの初心者は,肋間に探触子を当てたらそのままの位置で振り子運動をし(図20a),肋骨がじゃまで視野が得られないという.しかしほんの少し探触子を上下にずらすことにより視野は飛躍的に広がる(図20b)ことを覚えておいてほしい.


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