EBMのためのMedline検索

Evidence-based Medicine (EBM)実践の第一歩は患者さんの抱えている臨床的問題を医学論文で扱われているテーマあるいは研究課題に合うような形にすることである。その次のステップは文献の検索になる。ここでは具体的な例をあげてPubMedを利用してMedlineを検索してみよう。

Publication Typeを活用する

今年の冬はインフルエンザが日本では大流行した。インフルエンザに対してアマンタジンがどれくらい有効なのか、そして、発症後にも有効なのか、また予防的な投与は意味があるのかを調べてみよう。

この場合、Medlineの検索に使うキーワードを何にするのが良いかをまず考えなければならない。まず、思いつくキーワードは"amantadine"と"influenza"である。さらに臨床的な研究ということでPublication Typeを"clinical trial"に限定して検索してみることにする。Publication Typeを指定するタグは[pt]なので以下の検索語の組み合わせで検索してみる。(その他のPublication Typeの主なものについては文末にリストアップしておいた。)

"clinical trial [pt] influenza amantadine"

すると83個の論文がヒットした。

これでは多すぎて読むのが大変である。このような場合Entrez Date limit:で最近のものだけに絞って検索すると良い場合もあるが、この場合には単なるClinical Trialではなくて、Randomized Clinical Trial (RCT)だけを指定して検索してみることにする。Publication Typeを指定する語句を見ると、"randomized controlled trial"という語句が使われているので、次のようなキーワードで検索してみる。

"randomized controlled trial [pt] influenza amantadine"

すると、次のように23個の文献がヒットした。これくらいならアブストラクトを読むだけなら、短時間で目を通すことができる。このようにPublication Typeをうまく使うと必要な論文に限定することができる。全部表示させるために、Docs Per Page:を50に変更してもう一度Searchボタンをクリックする。

これでヒットした文献が全部表示されたが、23個と少ないのでこの段階でタイトルをざっとみて必要な文献だけを選択することにする。もちろん接続時間を短くしたい場合にはこのままDisplayボタンをクリックすれば全部がアブストラクトつきで表示される。さて、選択するには各文献の著者名の左のボックスをクリックしてチェックを入れる。また、検索結果をアブストラクト付で文書としてダウンロードする際のフォーマットはDisplayボタンの右のポップアップメニューで指定するが、通常はデフォルトのAbstract Reportのままで良い。後でEndNote Plusを使って取り込む場合にはここをMEDLINE Reportにしておく。

必要な文献の選択にあたって、まずテーマに関係無い論文が選ばれていたらそれは選択しないようにする。そして、Abstractが付いていない論文も除く。一応"randomized controlled trial"で臨床的な論文だけがヒットしているはずであるが、中には各論文へのMeSH(Medical Subject Heading)の付け間違いもありうるので、この場合にはあまり臨床と関係無いものは除く。今知りたいのはアマンタジンがインフルエンザに有効かどうか、特に発症後に有効かどうかと予防的に使えるのかを知りたいのであるから、タイトルを見てそれに関係なさそうなものは除外する。

そして、必要な文献にチェックをいれたら一番下にある、Saveボタンを使って文書として自分のパソコンのハードディスクにダウンロードして保存する。上の例ではWindowsのPC(Macintoshを使っている人はこれをMacintoshにする)、Textフォーマットで保存する。Saveボタンをクリックすると、次の画面が現れる。(この例はWindowsの場合である)。

デフォルトのこのファイルをディスクに保存するの方が選択された状態で、OKボタンをクリックする。

すると通常のファイル保存の画面が出るので、ファイル名を適当につけて、たとえば"amantadine.txt"のように、ファイルを保存するフォルダーを選択して保存ボタンをクリックする。この例ではデスクトップに保存している。保存がすんだらブラウザーを終了してインターネット接続を切断する。

保存した場所にあるファイルを開いてゆっくりと読む。

これはNotePadで開かれた今ダウンロードしたファイルである。

さて、この例では以下の文献をアブストラクト付でダウンロードした。なお、ここではタイトルのみをリストアップしてある。

Drinka PJ, Gravenstein S, Schilling M, Krause P, Miller BA and Shult P:  Duration of antiviral prophylaxis during nursing home outbreaks of influenza A: a comparison of 2 protocols.  Arch Intern Med   1998; 158:2155-9.  UI: 99015803  PMID: 0009801184

Reuman PD, Bernstein DI, eefer MC, Young EC, Sherwood JR and Schiff GM:  Efficacy and safety of low dosage amantadine hydrochloride as prophylaxis for influenza A.  Antiviral Res   1989; 11:27-40.  UI: 89227152  PMID: 0002712549

Sears SD and Clements ML:  Protective efficacy of low-dose amantadine in adults challenged with wild-type influenza A virus.  Antimicrob Agents Chemother   1987; 31:1470-3.  UI: 88132667  PMID: 0003435099

Hayden FG, Minocha A, Spyker DA and Hoffman HE:  Comparative single-dose pharmacokinetics of amantadine hydrochloride and rimantadine hydrochloride in young and elderly adults [published erratum appears in Antimicrob Agents Chemother 1986 Sep;30(3):579].  Antimicrob Agents Chemother   1985; 28:216-21.  UI: 86213932  PMID: 0003834831

Aoki FY, Stiver HG, Sitar DS, Boudreault A and Ogilvie RI:  Prophylactic amantadine dose and plasma concentration-effect relationships in healthy adults.  Clin Pharmacol Ther   1985; 37:128-36.  UI: 85100054  PMID: 0003967455

Payler DK and Purdham PA:  Influenza A prophylaxis with amantadine in a boarding school.  Lancet   1984; 1:502-4.  UI: 84140656  PMID: 0006142218

Younkin SW, Betts RF, Roth FK and Douglas RG, Jr.:  Reduction in fever and symptoms in young adults with influenza A/Brazil/78 H1N1 infection after treatment with aspirin or amantadine.  Antimicrob Agents Chemother   1983; 23:577-82.  UI: 83229581  PMID: 0006859836

Dolin R, Reichman RC, Madore HP, Maynard R, Linton PN and Webber-Jones J:  A controlled trial of amantadine and rimantadine in the prophylaxis of influenza A infection.  N Engl J Med   1982; 307:580-4.  UI: 82272126  PMID: 0007050702

Van Voris LP, Betts RF, Hayden FG, Christmas WA and Douglas RG, Jr.:  Successful treatment of naturally occurring influenza A/USSR/77 H1N1.  Jama   1981; 245:1128-31.  UI: 81120071  PMID: 0007007668

Bryson YJ, Monahan C, Pollack M and Shields WD:  A prospective double-blind study of side effects associated with the administration of amantadine for influenza A virus prophylaxis.  J Infect Dis   1980; 141:543-7.  UI: 80183527  PMID: 0007373087
Monto AS, Gunn RA, Bandyk MG and King CL:  Prevention of Russian influenza by amantadine.  Jama   1979; 241:1003-7.  UI: 79112025  PMID: 0000368354

これらの文献のアブストラクトを読んでみると、Amantadineは1日100mg投与で効果があり、副作用はほとんど無いこと、症状が出てから2日たって服用を開始しても、症状が軽減するだけでなく、ウイルスの排泄量も減少すること、予防的に服用しても約90%は発症が抑制されること、インフルエンザの流行期に3週間以上服用しても大丈夫なこと、高齢者も若年者も服用可能なことが分かる。
 

検索語句の組み合わせをいろいろ変えてヒット数を加減する

検索語句の組み合わせをいろいろ変えてみるというのは当たり前のことであるが、あまり範囲を狭くしてヒット件数が少なすぎても重要な論文を見落とす可能性が出てくるし、また範囲が広すぎてヒット件数が多すぎるとテーマと関係無い論文が紛れ込む可能性が高くなり、また読むのが大変な作業になってくる。自分の知りたいことをもれなくしかも適切な数拾い出すようにしたい。目的によっては関係無い論文が混ざってきても漏れを少なくしたい場合もあるであろう。その場合にはダウンロードして後でゆっくり読むようにした方が良いだろう。また、臨床の現場ですぐ決断が必要な状況の場合にはできるだけ論分数が少なく、しかも重要な論文は含まれるようにする必要があるだろう。この例では検索語句の組み合わせを変えてヒット数を加減しながら目的の情報をえられるかやってみることにする。

さて、カルシウム拮抗薬が心筋梗塞のリスクを上昇させるかどうかについて調べてみよう。特に短時間作用型のカルシウム拮抗薬について調べることにする。

"english[la] short-acting calcium blocker myocardial infarction"

これで検索すると、7件ヒットした。(なお、Advanced Searchを使って、同じ語句で絞り込んでいった場合にも同じ結果が得られた)。この中で、Psaty BM, et al. The risk of myocardial infarction associated with antihypertensive drug therapies. JAMA. 1995 Aug 23-30;274(8):620-5. PMID: 7637142; UI: 95364146.のアブストラクトを読むと高血圧患者に短時間作用型のカルシウム拮抗薬は利尿薬あるいはベータブロッカーと比べて心筋梗塞のリスクが60%上昇することが述べられている。他の文献はReview Articleでざっと目を通してみると確かにカルシウム拮抗薬が心筋梗塞のリスクをあげるかどうかが議論になっていることが分かる。

さて、これだけでは不充分な感じなので、別の語句の組み合わせで検索してみることにする。つまり"short-acting"を除いてカルシウム拮抗薬全体を対象にしてみる。それでは相当な数がヒットすることが予想されるので、"hypertension"と"risk"を追加して検索してみることにする。

"english[la] hypertension calcium blocker risk myocardial infarction"

今度は24件ヒットした。これぐらいの数であれば接続したままでざっと読むことができる範囲だと思う。タイトルを見て行くと、Michels KB, et al. Prospective study of calcium channel blocker use, cardiovascular disease, and total mortality among hypertensive women: the Nurses' Health Study. Circulation. 1998 Apr 28;97(16):1540-8. PMID: 9593558; UI: 98254390.という論文があるのでアブストラクトを読んでみると他の薬剤と比べカルシウム拮抗薬は心筋梗塞の相対危険度が1.42であったと述べられている。しかし、結論は慎重で交絡因子の関与も否定できないとしている。もう一つEstacio RO, et al. The effect of nisoldipine as compared with enalapril on cardiovascular outcomes in patients with non-insulin-dependent diabetes and hypertension. N Engl J Med. 1998 Mar 5;338(10):645-52. PMID: 9486993; UI: 98135519.という論文がある。アブストラクトを読むとNIDDMの高血圧患者でカルシウム拮抗薬とACE阻害薬を比べると前者で心筋梗塞のリスクは9.5倍であると述べている。

なお、アブストラクトを読むときは最後の方に書かれているConclusionの部分をまず見て全部読むべきか判断するようにするといい。

以上から短時間作用型のカルシウム拮抗薬の使用には注意すべき、あるいは使用しない方が良いだろうという結論になると思われた。

この例ではAdvanced Searchを使って、"hypertension"→"calcium blocker"→"myocardial infarction"という順序で絞り込んでゆき。そこから"short-acting"を追加したり、"risk"を追加したりしながら、進んだり戻ったりしていろいろと試しながら検索する方法も有効である。最初の検索から必ずしも思い通りに文献がヒットしない場合もあるので試しながらやってみることが必要である。
 

ガイドラインに関する文献を探す

さて、ついでに高血圧に関するガイドラインについてついでに調べておくことにする。そこでPublicatoin Typeの"guideline"を検索語句に入れて検索してみる。

"guideline [pt] hypertension"

128個ヒットした。これでは多すぎるし最近のものだけで充分であるから、Entrez Date limit:を5年にして、もう一度検索する。

すると今度は65個ヒットした。これでも多いので良く見ると[ ]括弧でタイトルが囲まれているものがある。これは英語以外の言語で書かれたものである。そこで英語だけに限定してみる。

"guideline [pt] english [la] hypertension"

それでも47個ヒットした。ヒットした文献にはportal hypertensionに関する文献などもも含まれていた。そこで、"high blood pressure"という検索語に変えてみる。

"guideline [pt] english [la] high blood pressure"

すると36個ヒットした。それではためしに過Entrez Date limit:を2にして過去2年を検索してみる。

今度は14個になったので、リストを見て行くと次の論文が見つかった。

[No authors listed]  The sixth report of the Joint National Committee on prevention, detection, evaluation, and treatment of high blood pressure. Arch Intern Med. 1997 Nov 24;157(21):2413-46. PMID: 9385294; UI: 98046261.

アブストラクトが付いているので読んでみると合併症があるときの高血圧管理の目標値について述べられている。この論文はJoint National Committeeの作成したガイドラインなので全文がインターネットで公開されているかもしれない。そこで今度はインターネット検索を利用してみることにする。

インターネット検索を利用する

できたら原文を入手したいのであるが、ためしにInfoseek (http://infoseek.go.com/)でインターネット検索をやってみることにする。この論文のタイトル部分をすべてコピーして検索フィールドにペーストして検索してみると、Arch Intern Medの記事そのものhttp://www.ama-assn.org/sci-pubs/journals/archive/inte/vol_157/no_21/isa70766.htm)がリスアップされてきた。さらに見て行くと米国NIHでもこのガイドラインを公開しているホームページ(http://www.nhlbi.nih.gov/nhlbi/cardio/hbp/prof/jncintro.htm)のあることが分かった。

それぞれ見てみるが、NIHの方はPDFファイルで546KBのファイルをダウンロードできるように置いてある。つまりマニュアルとしてそれを全世界に公開しているのである。これをダウンロードしてAdobe Acrobat Readerで開いて印刷することが可能である。

これを読めば高血圧治療に関する現在のコンセンサスを知ることができる。

このように内容によっては、インターネットの検索サイトを使って、さらに情報をオンラインで直接入手することも可能である。
 

EBMに向けて

EBMのためにはThe Cochrane LibraryACP Journal ClubなどをオンラインであるいはCD-ROMを入手して利用することも必要かもしれないが、それらも含めて自分で必要な情報を特異的に、つまり、その患者さんにとって個別に必要な情報を探し出し、その妥当性を評価し真実であると判断されればそれを患者さんの診療に生かすことができるようになることが一番重要であろう。

発表されている論文がすべて内的妥当性 Internal Validityの高いものとは限らない。結論だけを鵜呑みにして患者さんに適用するのではなく、その研究が正しく行われているかどうかを評価し、外的妥当性 External Validity (Generalizability、Extrapolationとも呼ばれる)を評価して、自分が診ている患者さんに適用して良いかどうかも判断する必要がある。

そのためにはCochrane Reviewのような論文の評価のしかた Critical Appraisalが必要になる。そのような活動は、すべての臨床医学研究はバイアスやランダムエラーあるいは交絡因子の影響が程度の違いはあれ混入していることを前提に真理にできるだけ迫ろうということだと思う。

しかし一方で、すべてのテーマあるいは臨床的問題に関して充分な研究が行われているわけではないということも事実である。そのような状況を理解した上で、できるだけ能率よく短時間で文献を調べ、日常臨床に活用することを心がけるべきであろう。

ためしに以下にあげたPublication Typeを利用していろいろと検索してみて欲しい。

(神奈川歯科大学 内科教授 森實敏夫)



主なPublication Type

Clinical Trial [includes all types and phases of clinical trials]
Clinical Trial, Phase I
Clinical Trial, Phase II
Clinical Trial, Phase III
Clinical Trial, Phase IV
Controlled Clinical Trial
Randomized Controlled Trial

Consensus Development Conference
Consensus Development Conference, NIH
Guideline [for administrative, procedural guidelines in general]

Meta-Analysis [quantitative summary combining results of independent studies]
Multicenter Study
Practice Guideline [for specific health care guidelines]

Review [includes all reviews; consider specific types]
Review, Academic [comprehensive, critical, or analytical review]
Review, Multicase [review with epidemiological applications]
Review of Reported Cases [review of known cases of a disease]
Review Literature [general review article; consider other reviews]
Review, Tutorial [broad review for non-specialist or student]



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