[P4]
§5.核反応
核反応 nuclear reaction ;
陽子 p や中性子 n 等の粒子を核に衝突させるときに起こる現象のことをいう。
核 X に粒子 a が衝突して核 Y と粒子 b,c,・・・ が生ずるときの反応式は、
X+a → Y+b+c+・・・
のように表わす。ここで X を標的核,a を入射粒子,Y を生成核,
b,c,・・・ を放出粒子という。
[例] 714N + α → 817O + p
49Be + α → 612C + n など.
反応のQ値 ;
標的核 X,生成核 Y の質量をそれぞれ mX,mY とし、入射粒子 a や
放出粒子 b,c などの質量をそれぞれ ma,mb,mc などとするとき、
反応前後の静止エネルギーの差 Q のことを反応のQ値といい、
次式で与えられる。
Q =(mX+ma) c2 −(mY+mb+mc+・・・) c2
しきいエネルギー threshold energy ;
Q値が正(Q>0)のときは発熱反応であって、入射粒子 a の運動エネルギー
が小さくても反応が起こる。Q値が負(Q<0)のときは吸熱反応であって、
入射粒子 a の運動エネルギーが、ある値以上でなければ反応は起こらない。
このとき必要な最小エネルギーのことを、しきいエネルギーという。
重心系においては、しきいエネルギーは Q の大きさにに等しい。
実験室系において、しきいエネルギーは次式で与えられる。
(しきいエネルギー) = −(mX+ma) Q/mX
(注) 重心系 center of mass systemとは、系の重心に固定した座標系
のことをいう。実験室系 laboratory systemとは、静止した標的核に
固定した座標系のことをいう。
[例題] 質量 6.65×10−24 g の粒子を質量 15.01×10−24 g の標的核
に衝突させたとき、実験室系でのしきいエネルギーが 8.28 MeV
であった。このとき反応のQ値を求めよ。
(解) (しきいエネルギー) = −(mX+ma) Q/mX より
8.28 MeV = −(15.01+6.65)×10−24g× Q/(15.01×10−24 g)
よって Q = −5.74 MeV
熱中性子 thermal neutron ;
正電気を持った粒子(陽子やα粒子等)を核に衝突させるには、核との間の
静電反発力のために極めて大きなエネルギーを必要とする。ところが電気を
持たない中性子を核に衝突させる場合には、静電反発力に妨げられることが
なく、低エネルギー(低速)の中性子であっても核反応を起こす。
低速度の中性子は、核の近傍にいる時間が長くなるので核に捕獲されて核反応を
起こしやすい。このような低速度の中性子を熱中性子という。
核分裂 nuclear fission ;
核子1個あたりの結合エネルギーは、中程度の質量数の核が最も大きく
約 8.6 MeV であるが、質量数の大きな非常に重い核では 7.7 MeV 程度と
小さくなる。したがって非常に重い核に中性子等が衝突すると、ほぼ同質量の
中程度の質量数の核に分裂しやすい。この現象を核分裂という。
1個の重い核の分裂により、非常に大きなエネルギーが放出される。
(およそ 0.2 GeV )
[例] 核分裂する核種: 90227Th, 92235U, 92238U, 94239Pu など.
核融合 nuclear fusion ;
軽い核の核子1個あたりの結合エネルギーは、質量数が中程度の核に比べて
小さいために、軽い核は融合して中程度の質量の核に近づこうとする。
この現象を核融合という。核融合の際に大きなエネルギーが放出される。
[例] 12H + 12H → 13H + p (Q= 4.02 MeV )
12H + 13H → 24He + n (Q= 17.59 MeV ) など.
物理学演習1
[1] 次の文章の( )中に、下欄より適当な語句や式を選んで、その記号を入れよ。
(1) 原子核は核子であるところの( )と( )が核力によって強く
結合して構成される。核力は( )によって媒介される。
同位核は( )の個数が等しく、( )の個数が異なる核のこと
である。
(a) 電子 (b) 陽子 (c) 陽電子 (d) 中性子 (e) 中間子 (f) 光子
(2) 原子核の大きさはおよそ( )cm の程度である。
(a) 10−20 〜 10−19 (b) 10−17 〜 10−16 (c) 10−13 〜 10−12
(d) 10−9 〜 10−8 (e) 10−6 〜 10−5
(3) 球形な原子核の半径は、近似的に核の質量数の( )に比例する。
(a) −1乗 (b) 2乗 (c) 3乗 (d) 平方根 (e) 立方根
(4) パラジウム核 46106Pd の半径はおよそ( ) cm である。
(a) 1.2×10−13 (b) 1.2×10−12 (c) 6.2×10−13 (d) 6.2×10−12
(5) エレクトロンボルト[eV]という単位は( )の単位である。
(a) 力 (b) エネルギー (c) 電圧 (d) 電流 (e) 電荷
(6) 静止している粒子の質量 m とエネルギー E の間には常に( )の
関係が成り立つ。ただし c は真空中の光速度である。
(a) E=mc (b) E=m/c (c) E=mc2 (d) E=m2c2
(e) E=m/c2 (f) E=m2c
(7) 炭素核 612C の質量を 19.92636×10−24 g とするとき、この核の
質量欠損は( )g である。ただし 陽子,中性子の質量をそれぞれ
1.67262×10−24 g,1.67493×10−24 g とする。
(a) 1.589×10−25 (b) 1.589×10−24 (c) 1.589×10−23
(d) 1.589×10−22
(8) 質量 0.05 mg は( ) GeV に相当する。
ただし 真空中の光速度を 3.0×108 m・s−1 とし、
eV=1.6×10−19 J とする。
(a) 2.0×1014 (b) 1.8×1015 (c) 5.2×1016
(d) 7.3×1017 (e) 2.8×1018
(9) 静止している電子を電圧 70kV でもって加速したとき、この電子の
得る速度は( )m・s−1 となる。ただし電子の静止質量を 0.51 MeV ,
真空中の光速度を 3.0×108 m・s−1 とする。
(a) 3.7×106 (b) 1.4×108 (c) 3.7×108 (d) 1.4×106
(10) 酸素原子核 816O の質量を 26.56005×10−27 kg とするとき、
この核の結合エネルギーは( )J である。
ただし陽子,中性子の質量をそれぞれ 1.67262×10−27 Kg,
1.67493×10−27 Kg とし、真空中の光速度を 3.0×108 m・s−1
とする。
(a)1.24×108 (b)124 (c)1.98×10−8 (d)1.98×10−11
(11) 放射線にはα線,β線,γ線がある。α線は( )であって、
β線は( )からなる。またγ線は( )である。
(a) 陽子 (b) 中性子 (c) 中間子 (d) ヘリウム核
(e) 光子 (f) 電子または陽電子
(12) β+崩壊の反応式は( )である。
(a) n → p+e−+νe (b) p → n+e−+νe
(c) p → n+e++νe (d) n → p+e++νe
(13) ベクレル[Bq]は( )の単位である。
(a) 放射線の強さ (b) 放射能の強さ (c) 吸収線量 (d) 半減期
(14) 光子のエネルギーEと光波の振動数νの間には( )の関係がある。
ただしhはプランク定数である。
(a) E=hν (b) E=h/ν (c) E=ν/h (d) E=hν2
(15) 電子の運動量 p と電子波の波長 λの間には( )の関係がある。
ただし h はプランク定数である。
(a) p=hλ (b) p=λ /h (c) p=h/λ (d) p=hλ2
(16) X線は波長が( )cm 程度の電磁波(光子)である。
(a) 10−1 〜 102 (b) 10−3 〜 10−1 (c) 10−6 〜 10−3
(d) 10−9 〜 10−6
(17) X線管に印加される電圧をV,電流を I,ターゲット金属の
原子番号 Z とすると、単位時間あたりに放射されるX線の
全エネルギーは( )となる。ただしηは定数で ある。
(a) ηZIV (b) ηZIV2 (c) ηZI2 V (d) ηZ2IV
(18) 強度 I0 のX線が、厚さxの一様な物質中を通過すると、
その強度は( )となる。ただし μは線吸収係数である。
(a) I0 eμx (b) I0 eμ/x (c) I0 e−μx (d) I0 e−μ/x
(19) 半減期 3.05 分の放射性核の崩壊定数は( )、平均寿命は
( )である。
(a) 3.79×10−3 s−1 (b) 3.79×10−3 s (c) 264 s (d) 264 s−1
(20) 半減期 138日の放射性核について、初めの時刻のときの個数の
1/1000 になるまでの時間は( )年である。
(a)1.63 (b)3.77 (c)5.84 (d)7.26 (e)9.33
(21) 定められた強度のX線を均一な物質中に入射させたとき、表面より
深さ 30.0 mm の点での強度が表面の 1/2 になった。このとき
表面の強度の 1/10 になるような深さは( )mm である。
(a) 52.3 (b) 78.4 (c) 99.7 (d) 112.5 (e) 137.2
[2] 重い核では中性子過剰のとき核が安定である理由を述べよ。
[3] 鉛核 82207Pb の質量を 3.4×10−22 g とするとき、この核の
密度を求めよ。ただし 核は球形とする。
[4] 静止していた電子を電圧 20 kV でもって加速したとき、この電子の
得るエネルギーは幾 J か。また このエネルギーの大きさは電子の
静止質量の幾 % に相当するか。ただし eV=1.602×10−19 J とし、
電子の静止質量を0.511 MeV とする。
[5] 静止している電子を速度 1.5×108 m・s−1 まで加速させるために必要な
電圧を求めよ。ただし 電子の静止質量を 0.51 MeV,真空中の光速度を
3.0×108 m・s−1とする。
[6] 炭素核 612C の質量を 19.92636×10−24 g とするとき、この核の
結合エネルギーは幾 MeV か。ただし 陽子,中性子の質量をそれぞれ
1.67262×10−24 g,1.67493×10−24 g とする。また 真空中の光速度
を2.998×108 m・s−1 とし、eV=1.602×10−19 J とする。
[7] 崩壊定数 3.82×10−9 s−1 の放射性核について、初めの時刻のときの
個数の1/10 になるまで幾年かかるか。
[8] 半減期 26 分の放射性核について、初めの時刻のときの個数の
1/10000 になるまでに要する時間を求めよ。
[9] α粒子の運動エネルギーE が 9.69 MeV のとき、ある気体中の飛程が
50 mmであった。E が 3.23 MeV のとき、この気体中での飛程を
求めよ。
[10] 波長 5.23×10−11 cm の γ線の光子のもつエネルギーは幾 MeV か。
ただし 真空中の光速度を 3.0×108 m・s−1 ,プランク定数を
6.626×10−34 J・s ,電子の電気量の大きさを 1.6×10−19 C とする。
演習問題1の[3]から[10]までの答え合わせはここをクリックして下さい。
なお[1]と[2]の答については、講義ノートを参照して下さい。
ここまでの内容についての質問等は下記宛に御願いします。
hattorit@kdcnet.ac.jp