2004年度版

5.不可逆変化とエントロピー

◆可逆と不可逆
   
覆水盆に返らず・・・ 
◆熱力学第2法則
   
「できない」ことの証明は難しい
◆エネルギーの劣化とエントロピー
   
エネルギーは減らなくても使えなくなる 
◆エントロピーと自然の変化
   エントロピーは増大する

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◆可逆変化と不可逆変化

 振り子を左から右にゆらすと、また自然に右から左にゆれてもとの状態に戻る。このような変化を可逆変化(reversible process)という。ところが、インクを水の中に落としたときは、インクは広がる一方で決してもとに戻ることはない。インクの溶けた水を蒸留して、再びインクと水に分離することは可能かも知れないが、エネルギーを必要とする。このように、エネルギーを使わなければもとに戻らない変化を不可逆変化(irreversible process)と呼ぶ。


◆熱力学の第2法則(second law of thermodynamics)

 不可逆であることを証明することはできない。というのは、一つの方法ではもとに戻すことが不可能でも別の方法でできるかも知れないからである。例えば、水に拡散したインクを濃縮するのに、蒸留では熱を必要とするが、特殊な膜を使えばどうだろうか、あるいは長時間置いておいたらインクが沈まないだろうか、と様々なことが考えられる。思いついたことを全てチェックしたとしても、他の方法がないという保証はない。 
 そこで、今までの経験を通して、まず間違いなく不可逆過程と考えられるものを一つ決めることにする。ある変化が、もしこの過程に帰着することがわかれば、これも不可逆過程ということができる。
 確かに不可逆過程と考えられるものは多くあるが、ここでは次のものを法則として取り上げる。すなわち

 高温の物体から低温の物体へ熱が伝わる過程は不可逆である」

これを熱力学の第2法則という。


 【熱力学第2法則】

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【例題5-1】

太陽光線を凹面鏡で集めることにより、最高どのくらいの温度を得ることができるだろうか。ただし、太陽の表面温度を6000℃とする。

解答

 


【例題5-1b】

摩擦にによって熱が発生する現象は不可逆であることを、熱力学第2法則を使って証明せよ。

解答

 


◆熱機関(heat engine)

 自動車、発電所など熱を仕事に変えることは多く、重要なことである。どのようにしたら、熱を仕事に変えることができるのだろうか。
 まず低温でシリンダーに入れた気体をピストンで圧縮する。このとき温度を一定にしておくと、気体の内部エネルギーは変わらないから、加えた仕事と同じだけの熱が出ていく。(熱力学の第一法則)
 つぎにこれを高温で温度一定にして膨張すると仕事をさせることができる。このとき仕事と同じだけの熱を吸収する。圧縮するときに仕事を要するが、高い温度で膨張すれば、圧力が上がるだけ仕事も大きくなるので、全体で仕事をすることになる。

   

○ヒートポンプ(heat pump)

 熱機関を逆に動かすと、つまり高温で気体を圧縮して低温で膨張させると、外から仕事を加えて低温の物体から熱をうばい、高温の物体に熱を与えることになる。これをヒートポンプといい、冷蔵庫やエアコンなどで利用されている。


◆ 第2種永久機関(熱をすべて仕事に変える機械)

 熱機関で低温熱源に捨てるのは無駄である。これを0にすることはできないだろうか。つまり、熱を全て仕事に変えてしまうことは可能だろうか。もし可能だとすると、例えば海水から熱を取り、これを仕事に変えてスクリューを回せば、燃料のいらない船ができる。このような機械を第2種永久機関という。
 実はこれは不可能であることが知られている。熱機関には必ず、高温源と低熱源の二つが必要なのである。

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【例題5-2】
熱力学第2法則を使って、第2種の永久機関が不可能であることを証明せよ。

解答


◆熱機関の最大効率
熱を全て仕事に変えることができないとすると、最大どのくらいを仕事にすることができるのだろうか。熱機関の最大の効率(efficiency)を考えてみよう。
 気体の圧力は絶対温度に比例するから,気体が膨張するときにする仕事(Q1)圧縮するときに要する仕事(Q2)も絶対温度に比例する。
  pV=nRT…気体の状態方程式
   
W=pΔV …気体のする仕事)
したがって
     

効率ηは受け取った熱に対する外に対してした仕事の比で表されるから
    

となる。つまり、最大効率は熱源の絶対温度だけで決まることになる。


◆ エネルギーの劣化
 エネルギーは保存するのに、なぜエネルギー問題が生じるのだろうか?それは、たとえエネルギーがあっても使えなくなってしまうからである。例えばガソリンで自動車を走らせる場合、ガソリンを燃やした熱の一部が自動車の運動エネルギーになり、残りは廃熱として大気に放散する。また、運動エネルギーの方も自動車が止まるまでの間にブレーキなどの摩擦でやはり熱になってしまう。これらの熱はもはや利用できない。
 このようにエネルギーが劣化する度合いを表す方法を考えよう。まず気体に仕事を加えて圧縮した場合と、同じ仕事で摩擦して熱を加えた場合を比較してみる。気体を圧縮した場合は、膨張するときに加えた仕事と同じだけの仕事を取り出すことができる。つまりエネルギーの劣化はない。ところが加熱した場合は加えた熱の一部しか仕事に戻すことができない。この最大効率は熱源、つまり気体の温度で決まり、このとき気体の温度が高い方が効率が大きい。つまり、
 (1)仕事が熱に変わるとエネルギーは劣化する。
 (2)熱が加わる物体の温度が高い方がエネルギーの劣化は小さい。
ということがわかる。


◆エントロピー(entropy)
 エネルギーの劣化を表す指標として、「エントロピー」という量を導入する。前節の結果から、

                

 と決めることにする。すなわち、物体に熱が加わるとエントロピーが増え、熱が出ていくと減少することになる。このときの変化はその物体の絶対温度に反比例する。エントロピーをとすると、その変化ΔSは、

                                                                      

と式で表すことができる。

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【例題5-3】
0℃,2.5kgの氷の固まりを大きな岩の上に置たところ,しばらくして全部融けた。
 (1)氷のエントロピーの変化はいくらか。ただし,氷の融解熱を335 J/gとする。
 (2)岩の熱容量が非常に大きく,つねに21℃に保たれていたとすると,岩のエントロピーの変化はいくらか。
 (3)全体のエントロピー変化はいくらか。

解答

 

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◆エントロピーと自然の変化
 熱が入るとエントロピーは増え、熱が出ていくとエントロピーは減る。したがって、部分的に見るとエントロピーは減ることもある。しかしある物体から熱が出るということは、別の物体が熱を吸収しているはずである。その物体ではエントロピーは増大する。大事なのは、その両者をひっくるめて見たとき、
全体としてエントロピーが減少することはない. 
ということである。上の文も熱力学第2法則の別表現ということになる。

【例題5-4】
第2種の永久機関ができないことをエントロピーを使って説明せよ。

解答


◆熱機関の効率

【例題5-5】
エントロピーを用いて熱機関の最大効率を求めよ。

解答

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【例題5-6】

原子力発電所では,原子炉の熱で約300℃の水蒸気を作り,これを用いて発電する.冷却水の温度を20℃としたとき, 発生する熱のうち電気エネルギーに変わるのは最高何%か.

   解答


◆まとめ

○不可逆変化
  自然にもとにもどらない変化

○エントロピー
  ΔS=Q/T   

○熱力学の第2法則
  
エントロピーは増大する。


演習問題(5) 

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