2004年度版

1.温度と理想気体

温度  40℃は20℃の2倍か
温度計 アルコール温度計の50℃と水銀温度計の50℃は違う?
熱膨張 暖めると縮むものだってある
理想気体と絶対温度
     理想
気体を使えば理想の温度計ができる


◆ 温度
☆感覚的温度

 温度の元になっているのは、「暖かい」とか「冷たい」という感覚である。しかし、感覚的な温度は客観的に正確ではない。例えば気温が同じ18℃でも、真冬には暖かく感じるし、真夏には寒く感じる。

☆物理的温度

 ◎熱平衡と同温度

 温度を客観的に定めるにはどのようにしたら良いだろうか。まず、「同じ温度」を決めることを考えよう。例えば、冷たい水の中に熱い鉄を入れると、水の温度は上がって鉄の温度は下がっていく。そして十分時間が立てば、いずれの温度も変化しなくなる。このように2つの物体を接触させても、温度が変わったり溶けたり固まったりという変化が起きない時、この2つの物体は熱平衡にあるという。そして熱平衡にあるとき、これらの物体の温度は等しいものとする。

     

○熱力学第0法則

熱平衡に関して、つぎのことが経験的に知られている。
「AとBが熱平衡でかつ、BとCが熱平衡ならば、AとCは熱平衡である」
つまり
「AとB、BとCが同じ温度なら、AとCも同じ温度」
ということになる。これを熱力学の第0法則という。

   

◎温度と分子運動 

 体積を一定にして気体の温度を高くすると圧力が大きくなる。これは温度が高くなるに従い、気体分子が激しく壁面に衝突するようになるからである。つまり、温度は気体分子の運動エネルギーを示していることになる。またこのような気体と熱平衡にある液体や固体を考えてみると、やはり温度が高い方が分子・原子が激しく運動していることがわかる。つまり、温度とは物体を構成する分子・原子の運動エネルギーを表す指標なのである。

 

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◆ 温度計
 客観的に温度を示すのには、温度を数値で表せればよい。ところがものさしや秤は古代からあるのに、温度計は17世紀になるまで作られなかった。これは長さや質量に比べて温度の測定が難しいためである。長さや質量の場合は基準を決めれば、その何倍かということで計ることができる。例えば、パリを通る子午線の、北極から赤道までの長さの1000万分の1を1mとすれば(1791年の定義)、これの3倍の長さのものは3mと定められる。ところが温度の場合は例え基準となる温度を定めても、これを足したり掛けたりすることはできないから、別の温度の指標には使えない。

 そこで温度を測るには、温度に伴って変化するものを使う。例えば物質の体積、電気抵抗は温度によって変わるので、これらを測定すれば逆に温度を知ることができる。最初に温度計を作ったのはガリレオといわれている。ガリレオは空気の体積の温度変化を利用したが、これは気圧の影響を受けるため、短い時間の温度の変化しか計ることができなかった。ガラス管の中にアルコールを密封して気圧に左右されない温度計が初めて作られたのは、1640年頃のことである。現在では様々のものを利用して温度計が作られている。

◇温度計の色々

 ○液体温度計
   液体の熱膨張を利用したもの。液体としては水銀か着色した灯油が主に用いられる。
   電源など不要で手軽に使えるが、測定範囲は-50 ℃〜200 ℃程度でそれほど広くない。

 ○バイメタル温度計
   固体の膨張率は小さいので、単体で温度測定に使われることはない。
   しかし膨張率の異なる2枚の金属を重ね合わせると、温度変化によって曲がるようになるので、
   温度計として使えるようになる。ペンなどを動かすこともできるので、自動記録器や調節器に
   使われている。

 ○抵抗温度計
   金属または半導体の抵抗の温度変化を利用したもの。電気的に測定するので、デジタル表示や
   機器に組み込んで温度制御をするのに向いている。白金などの金属は再現性がよいので精密測
   定に用いられ、サーミスターなどの半導体は抵抗の温度変化が大きいので一般用のデジタル温
   度計に利用されている。測定範囲は白金温度計で-260 ℃〜600 ℃、サーミスター温度計で
   -60 ℃〜150 ℃くらいである。

 ○熱電温度計
   2種類の金属の端を接合させると、両端の温度差に応じて起電力が生じるようになる。
   このように金属を組み合わせてものを熱電対(ねつでんつい)といい、これを利用した温度計を
   熱電温度計と呼ぶ。銅とコンスタンタン(CuおよびNiを主とした合金)の対で-200 ℃〜350 ℃、
   クロメル(NiおよびCrを主とした合金)とアルメル(Niを主とした合金)の対で-200 ℃〜1200 ℃
   と測定温度範囲が広いのが特徴である。また、これも電気的に測定するものなので温度制御用など
   にも用いられる。ただし、両端の温度差を測定するものなので、片側を0℃に保つ必要がある。
   (装置によっては、片側の温度を別の温度計で測定し、補正する回路が組み込まれている)。

 ○放射温度計
   物体が出す赤外線などの電磁波は温度によってスペクトルが変化するので、これを利用して温度を
   測ることができる。接触せずに測定できるのが利点である。ただし同じ温度でも物体の表面の状態
   によってスペクトルは異なるので、その補正が必要である。測定温度範囲は-50℃〜500℃、
   600℃〜3000℃などのものがある。


◆ 温度計の目盛り

○温度計の目盛り

 温度計が作られて、温度が測れるようになった。しかし、最初は目盛りのふり方は決まっておらず、各自がかってに0とか100とか付けていた。例えば、ドイツの物理学者ファーレンハイト(漢字表記で華倫海)はつぎのように温度を決めた。

 1)水と氷と塩化アンモニウムの混合物で得られるもっとも低い温度を0度
 2)氷の融解点を32度
 3)ヒトの体温を96度

これは現在でも米国などで使われているカ(華)氏温度(単位:!)のもとになっているものである。

 一方、スウェーデンの天文学者セルシウス(漢字表記で摂爾修)は

 1)水の沸点を0度
 2)氷の融解点を100度

と定めた。これが良く使われているセ(摂)氏温度(単位:℃)のもとになっているものである。もちろん、今では水の沸点を100℃、氷の融解点を0℃としている。

 セ氏温度(θC)とカ氏温度(θF)の関係は

  

となる。

(注:温度を単位で割る理由)


定点以外の目盛り

氷の融解点を0℃、水の沸点を100℃とすれば、どんな温度計であってもこれらの温度は一致する。ところが、この中間を示す温度はいつも同じであるという保証はない。液体の膨張のしかたは物体によって異なるからである。極端な例として、水は0℃から4℃になると収縮してしまう。(→水の熱膨張のグラフ

 

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◆ 熱膨張
 物体は温度とともに大きさが変化する。固体の長さlは、下のグラフに示したように、ふつう温度に比例して増加する。式で表せば、

           (1.1)

と表せる。ここで、l0は0℃のときの長さ、αは線膨張率である。αは単位長さ当たりの伸び率、すなわち

              (1.2)

であり、物体の温度による伸びやすさを表している。温度差の単位はK(ケルビン)なので、膨張率の単位はK-1となる。なお通常はαは非常に小さいので、(1.2)式のl0lとして差し支えない。すなわち

              (1.2b)

としてよい。

 

 
液体や気体の場合は、体積の変化に着目する。0℃の時の体積をV0、温度θの時の体積をVとすると、

       (1.3)

となる。ここでβは体膨張率で、線膨張率と同様に

          (1.4)
と表せられ単位もやはりKである。

表(種々の物質の膨張率)


○熱膨張の応用例(ミクロトーム)

 電子顕微鏡用の試料切片を作成するのにミクロトームという機械(→)が使われる。これは熱膨張を利用して試料を移動させ、非常に薄い切片を作ることができる。

 

【例題1-1】超ミクロトームで試料を1.0×10-6m移動するには,金属棒を何度上げればよいか.金属棒の長さは20cm,αは1.2×10-5 K-1とする。

                                解答

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◆ 理想気体と絶対温度
◎ボイルの法則
 気体は圧力を加えると体積が減少する。このとき圧力,体積の関係は,温度一定のとき圧力が低い領域では、

   pV= 一定      (1.5)

となっている。これをボイルの法則という。

[理想気体]
 
温度が低いときや圧力が大きいときは、ボイルの法則は成り立たなくなる。これは気体分子には大きさがあるため、ある程度以上は気体の体積が小さくならないのと、また分子同士が近付くと引力が働き、その分圧力が減少してしまうからである。逆に十分希薄で分子の大きさや分子間の引力が無視できるならば、ボイルの法則はよく成り立つ。このようにボイルの法則に従う気体のことを理想気体と呼ぶ。

◎気体の膨張率
 
理想気体の熱膨張の特徴は、固体や液体と違って、物質の種類によらないことである。つまり十分希薄であれば、酸素でも窒素でも水蒸気でも、同じように体積が変化する。摂氏温度θの理想気体の体積は,圧力一定のとき、0℃のときの体積をV0とすると,

     (1.6)

となる。すなわち温度が1℃上昇するごとに0℃のときの体積の1/273.15ずつ膨張する。これをシャルルの法則という。グラフで表すと下図のようになる。

[絶対温度]
 摂氏温度の0度というのは,氷という特定の物質の融点を基に定められたものである。したがってこの「0」という値には絶対的な意味はない。そこで,グラフを延長して,V=0となるところが0度となるように目盛りを付け直す。このように定めた温度を絶対温度といい,このときの0度を絶対零度という。単位はK(ケルビン)である。絶対温度Tと摂氏温度θの関係は,

   T /K=θ/℃ +273.15    (1.7)
     (注:T、θには単位が含まれるため、各項の単位が等しくなるように、T、θをそれぞれK、℃で割ってある)

だから,(1.6)式(シャルルの法則)をTを用いて表すと,

     (1.8)

と簡単になる。ここでT0 =273.15 K(=0 ℃)である。すなわち,気体の体積は絶対温度に比例することになる。また,絶対温度は気体分子の運動エネルギーに比例する(したがって絶対零度より低い温度は存在しない)ことから,科学でよく使われる尺度となっている。

 

 

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◆理想気体の状態方程式
式(1-5),および式(1-8)より
  pV=RT
という関係がえられる。ここでRは気体定数と呼ばれる定数である。よって物質量の気体では
  pVnRT
となる。これを理想気体の状態方程式と呼ぶ。


【例題1-2】
1molの理想気体は0℃,1気圧(=1.013×105N/m2)で22.4 Lの体積をしめる。これを用いて,気体定数の値を求めよ。

【解答】


【例題1-3】
45Lのポリ袋で17gの熱気球を作った。これが浮き上がるためには袋の中の空気を何度以上にすればよいか。ただし、空気1 molの質量をを28.8g、圧力を1気圧(=1.013×105N/m2)、気温を20℃、気体定数を8.3 J((I%K-1((I%mol-1とする。

【解答】


◆まとめ

○線膨張率

長さ$の物体の温度がΔT変化したとき長さがΔJ変わったとすると、このときの線膨張率αは、

   

○絶対温度

摂氏温度θと絶対温度Tの関係は、

   T /K=θ/℃ +273.15

 

○理想気体の状態方程式

気体定数をRとすると、物質量n の理想気体の、圧力p、体積V、絶対温度Tの関係は、

   pVnRT


    


演習問題解答

プリントダウンロード(講義で配布したもののpdfファイルです。)

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